窯業系サイディングにも外壁塗装が必要!時期と劣化の見分け方、塗装のポイントを徹底解説

目次

01サイディング外壁でも塗装のメンテナンスが必要

近年の新築住宅の半数以上の外壁でサイディングボードが採用されています。サイディング外壁はモルタル外壁よりもひび割れなどの劣化が少なく、外壁塗装は必要ないと考えている人もいるようです。しかしサイディング外壁にもメンテナンスは必要です。劣化を放置しておくとサイディングボード自体が傷み、最悪な場合張替えが必要なこともあります。

この記事では窯業系サイディングボードのメンテナンスについて解説しています。 サイディングボードの耐用年数から外壁リフォームが必要な時期や、劣化状態のチェックと塗り替えを考えるタイミング、費用、塗料選びについてもまとめています。

この記事を読めば窯業系サイディングボードを長持ちさせて、無駄な費用やリスクを避けることができます。 窯業系サイディングボードの外壁材を使用している方は参考にして住宅のメンテナンスに役立ててください。

02自宅の外壁材を確認しよう

本題に入る前に外壁について確認しておきます。この記事では窯業系サイディングボードを使用した外壁について解説しています。外壁の劣化やメンテナンス方法を知るためにも基本的な知識を確認しておきましょう。

サイディングとは

サイディングボード

外壁にモルタルを塗ったりタイルを貼ったりする外壁とは違い、ボード型になっている外壁材を張り付けていく工法がサイディングです。

あらかじめデザインされたボードを外壁に張り付け、ボードのつなぎ目はシーリングで埋めていきます。モルタルやタイル貼りのように職人の技術を必要とせず、手間をかけずに丈夫で品質の安定した外壁を低コストで作ることができます。

サイディング外壁の種類

この記事では窯業系サイディングの外壁についてまとめています。サイディングボードに使われる材質にはいろいろな種類があるので、他の種類との違いについても確認しておきましょう。

窯業系サイディング

セメントを原料としていて、形状や色などデザインの自由度が高く、安価で比較的丈夫なことから最も普及しているサイディングです。

金属系サイディング

ガルバリウム鋼板を主流とした金属の板を加工したサイディングです。加工しやすく丈夫で扱いやすい素材です。

木製サイディング

木材を使用したサイディングです。木の持つ独特の風合いや柔らかさがあります。

樹脂製サイディング

樹脂を使用したサイディングボードで外観は窯業系と同様にデザインの自由度が高く、最も高価で耐久性に優れたサイディングです。

窯業系サイディングの特徴

窯業系サイディングはセメントを原料とした外壁材です。
他のサイディング材と比較して、最も大きなメリットはデザイン性が高いということです。
窯業系サイディングはセメントを主原料とした材質なので形も自由に変えることができ、レンガ調、ブロック調、木目調まで表現することもできます。色合いも近年の塗装技術により均一、不均一ともに多彩な色合いを作り出すことができます。

デメリットは水を吸いやすく、吸い込んだ水が氷ると膨張して破損する凍害という現象が起きやすい材質です。そのため塗装が必須です。はじめから多彩なデザインなど加工がされていますがコーティングもされている状態です。
また湿気や水分を吸ったり渇いたりを繰り返すことによってサイディングボードが反ってくるという劣化症状が現れてきます。

03窯業系サイディングのメンテナンス

窯業系サイディングボードの耐用年数

窯業系サイディングの耐用年数は30~40年です。耐用年数はあくまで目安としての年数です。建物のある地域、自然環境の影響によって大きく異なります。

自然環境による影響

紫外線


風と一緒に飛んでくる塵や砂を含めた飛来物
湿気
虫、動植物による侵食
気温(熱、凍結、激しい寒暖差)

外壁は家を守る盾として、日々過酷な自然環境にさらされています。外壁材が劣化して壊れてしまうと雨水が染み込んで雨漏りや建物内部の劣化を進めてしまうことになります。

サイディングの交換

塗膜の劣化を放置すると、外壁を守る機能が弱くなるので外壁材が直にダメージを受けるようになります。軽微な劣化や損傷であれば簡単な補修や外壁塗装で修繕することができますが、ひどい場合は直すことができません。

外壁材自体がダメになってしまった場合は外壁材の交換か、カバー工法という工事を行う必要があります。

外壁材の交換

外壁材の交換は古い外壁材を全て剥がし、新しい外壁材を貼り付けます。外壁材を剥がす手間と廃材の処理、新しい外壁材の代金などの費用が必要です。
サイディングの交換費用は、一般的な大きさの住宅でざっくり200万円~250万円ほどが相場です。

カバー工法

古い外壁材を剥がさずに上から軽量の金属系サイディング等の新しい外壁材で覆う方法をカバー工法と言います。古い外壁材を剥がす手間や廃材を処理する費用がかからない分、外壁材の交換より安く済みます。しかし外壁材を重ねることで家に負担が掛かるデメリットがあります。また手間が少ないからと言って張替えよりダントツに安いわけではありません。一般的な大きさの住宅でざっくり170万円~200万円が相場です。

どちらにしても外壁自体がダメになってしまうと費用が掛かるだけではなく家本体の状態も悪くなってしまいます。
長い期間を考えると定期的に外壁塗装を行うことが最も外壁を長持ちさせ、コスト的に安価で済みます。

外壁塗装のタイミング

新築から一度もメンテナンスしていないのであれば、外壁塗装を行うタイミングは8~10年が目安です。しかし使用されている塗料の性能や環境の影響により適切な塗装時期は違いがあります。

▼ 塗料の材質と耐用年数
アクリル塗料 10年未満
ウレタン塗料 10年前後
シリコン塗料 10~15年
フッ素塗料 15~20年
無機塗料 15~30年

塗料の耐用年数もあくまで目安となります。環境が悪ければ劣化が早くなりますし、良ければ長持ちします。
実際に塗装が必要な時期を見極めるには外壁の劣化症状を確認します。外壁の劣化症状が進んでいればメンテナンスの時期を知らせるサインです。外壁の状態どうなっているか確認してみましょう。

04劣化症状の確認方法

色・汚れの状態

色あせ・退色

色が薄くなっているということは紫外線によって顔料の色素が劣化しているということです。塗膜全体にも劣化が及んでいる可能性があります。また色の退色は熱の吸収や色による心理的効果などの機能も低下しているということになります。

カビや藻の発生

外壁表面にカビや藻が発生している場合は塗膜の防水性やコーティングが弱くなり、砂や塵などの付着物が雨で流れにくくなっている可能性があります。汚れは見た目だけの問題ではなく汚れが付着することによって塗膜が傷つくということにもなります。

要注意!

外壁に家庭用高圧洗浄を使うのは危険です。圧力が合わないと外壁の塗膜を傷付けてしまうことがあります。外壁の汚れが気になる場合は専門の業者に相談しましょう。

塗膜の劣化

ひび割れ

外壁発生するひび割れをクラックと呼びます。クラックには2種類あり、硬くなった塗膜が割れている場合と外壁材自体にクラックが発生している場合です。塗膜がひび割れている場合はかなり軽傷のクラックですが、塗膜の割れ目から雨水やごみが入り込むと外壁材が傷む原因になります。
ひび割れが多い場合は塗膜全体が硬くなってきている可能性があり、外壁塗装を検討するタイミングです。

チョーキング現象

塗膜が劣化し、分離した成分が粉状になる現象をチョーキング現象と言います。外壁材を触ると手に白粉が付きます。正常な外壁はツルツルしているかサラっとしているので、このような状態にはなりません。ただの汚れと見分ける方法は顔料に含まれる白い成分が分離して起きるので白い粉が手に付きます。
塗膜がかなり劣化している状態というサインですので塗り替えを検討するタイミングです。

塗膜の剥がれ

ひび割れを通り越して悪化すると塗膜が剥がれ落ちます。塗膜の剥がれは劣化以外にも不適切な下処理が行われなかった場合や相性の悪い塗料を使用した場合にも発生します。いずれにしても塗膜が剥がれてむき出しになっている部分の外壁は無防備な状態となります。
まだ新しく一部分であれば塗装業者に補修の相談をしてみましょう。

要注意!

外壁をDIYで補修するのはおすすめできません。ひび割れに補修剤を付けすぎると汚い外観になります。べっとりと張り付けた補修剤は後から外壁塗装をしてもきれいにならないことがあります。また素人が行った補修では根本原因の修繕ができず不完全な場合があります。クラックの補修はプロに任せましょう。

シーリングの劣化

目地が痩せている

サイディングにはボードのつなぎ目に必ずシーリングがされています。この溝がくぼんで中のシーリング材の厚みが減っている場合はシーリングが劣化している可能性があります。シーリングが劣化するとそこから水が染み込んで外壁ボードや家の内部まで痛めてしまうこともあります。
シーリングの劣化が外壁の劣化とは限りませんが、専門の業者にシーリングの状態を確認してもらいましょう。

シーリングのひび割れ

目地に入っているシーリングがひび割れている場合はシーリング材が劣化し硬くなっている状態です。日々から水が染み込むので早めの対応が必要です。全体的に劣化している可能性がありシーリングの打ち直しが必要なタイミングです。

塗膜に水ぶくれ

劣化や施工不良が原因でシーリングに隙間ができると、そこから雨水などが外壁材へ染み込みます。防水の塗料などを使用している場合は外壁材に染み込んだ水分が蒸発できず、外壁材と塗膜の間で水ぶくれのようにたまっていきます。ひどくなると広範囲の塗膜が剥がれてしまうので早期に対応が必要です。

要注意!

お風呂や水回りに使用するシリコンコーキング材は外壁に使用してはいけません。シリコンコーキング材を使用するとその上に塗料を塗ることができなくなります。用途は似ていますが外壁用途は別なので絶対に使用しないようにしましょう。
シーリングとコーキングは呼び方の違いで同じものです。シーリングという名前でもシリコン製であればシリコンコーキングと同じですので気をつけましょう。

外壁材の劣化

ひび割れ(クラック)

外壁材自体のクラックが起きている場合はひびの幅が3㎜以下であれば簡単な補修が可能です。それ以上大きいと内部へ水が入りやすく、鉄骨や木材などの被害が出やすいので早急に補修する必要があります。

欠け

ぶつけてしまった場合など原因が分かる場合を除き、外壁材が劣化により欠けてしまっている場合は外壁材に深刻な劣化が起きている可能性があります。早急に外壁の専門業者に相談し、劣化の状態を診断してもらうことをおすすめします。

雨漏り

家の内部に水が染み出している場合は水道管の破損の場合と外壁からのしみ出しの可能性があります。屋根からの雨漏りの場合もありますが、高い位置の雨漏りでも外壁から染み出ていることがあります。外壁の損傷と共に壁内部の防水シートなども損傷している可能性があるので早急に修繕が必要です。

05見積もりと相場

サイディングの塗装工事

塗装工事の流れ

劣化診断
施工費用見積もり
施工契約
足場設置工事
高圧洗浄
下地処理
養生
下塗り
中塗り・上塗り
仕上がり確認
足場撤去

外壁塗装工事の施工手順は基本的に同じです。上記順は最低限の作業工程で、この中から何かを省くということはあり得ません。 サイディングの外壁塗装の場合、下地処理としてサイディングボードをつなぐシーリングの打ち直し作業が入ります。

シーリングの劣化はサイディング外壁の致命傷となるので外壁塗装のタイミングで一緒に行うことをおすすめします。シーリングだけを後から打ち直しとなると足場代などの料金がまた別途かかることになります。

外壁塗装の相場

サイディング外壁の相場

通常の外壁塗装工事相場 80万円~100万円
屋根の塗装工事相場(外壁とセット) 20万円~40万円
シーリング打ち替え相場 10~20万円超

外壁塗装の相場は敷地30坪程度の一般的な2階建て住宅で約80万円~100万円です。
外壁塗装と併せて屋根塗装を行う場合が多い傾向です。屋根塗装は外壁塗装とセットで相場約20万円~40万円。相場の合計は約100万円~140万円です。
しかし外壁塗装の価格は家の状態や希望する内容で変わります。

外壁塗装の価格が変わる事例

外壁の面積が広い
塗装面が複雑
付帯塗装部が多い、複雑
塗料の質の違い(価格)
劣化の状態、補修の費用
廃材の量など

シーリング打ち替え相場

外壁塗装の実際の価格は家の個性によって大きく異なります。そのため相場はあくまで参考に、全体で最低100万円前後と考えておきましょう。
更に、サイディング外壁の塗装工事にはシーリング打ち替えという費用がかかってきます。
シーリング打ち替えの費用単価は補修する目地の長さ、m(メートル)単位で900円~1200円程度が相場です。
他の相場同様の条件では20万円前後が相場になります。

見積もりの基本的な項目

サイディング外壁の塗装工事費用見積もり相場

足場代 15万円~20万円
高圧洗浄 2万円~5万円
下地補修 5万円~10万円
シーリング打ち替え 15万円~25万円
下塗り 8万円~10万円
上塗り(2回) 20万円~60万円
屋根塗装 20万円~40万円

足場代

足場代は設置と撤去1セットでの価格です。また上記見積もりでは建物全体を覆うメッシュシートの価格も込みで記載されていますが分けられている見積書もあります。
足場代は施工主の都合で追加設置する場合は、度設置費用を請求されます。

高圧洗浄

高圧洗浄は面積に対して価格が変わってきます。外壁表面によほどの汚れがなければ基本的な価格は変わりませんが、業者によって特殊な機械を使用して洗浄する場合は価格が変わることがあります。

下地補修

下地補修は補修範囲や程度によって価格が変動します。

塗装費用

下塗りと上塗りはどんな塗料を選ぶかで価格が大きく変わります。
見積書では下塗り、中塗り、上塗りと分けて記載する場合もありますが多くは使用する塗料別に分けて記載されています。

シーリング打ち替え

シーリングはサイディングボードをどのようにつないでいるかによってつなぎ目の長さが変わってきます。また質の悪い施工をした後は古いシーリング材を撤去するのに手間がかかるためさらに費用が高くなることもあります。

要注意!

シーリングの補修工事には痩せて衰えたシーリング材の上から新しいシーリング材を補強する「シーリング増し打ち」という方法を提案されることがありますが、この記事ではおすすめしません。
シーリングには外壁とサイディングボードの接着と防水機能以外にも、外壁の歪みを整えるという役割があります。地震や温度差で発生する外壁の歪みをシーリング材の弾性が吸収し整えてくれています。劣化して硬くなったシーリング材ではこの機能を果たせません。
また、次回シーリング打ち替えをする際に抜去するのが困難になります。

06塗料の選び方

塗料の種類

1.材質による分類

各材質の機能性や耐用年数はメーカーや商品によってもまた違いがあります。ここでの耐用年数はあくまで一般的な品質の事例として参考にしてください。

アクリル塗料

耐用年数は10年未満が多く、塗料のグレードとしては一番低く、長持ちはしませんが安価です。

ウレタン塗料

耐用年数は10年前後が多く、塗料のグレードとしてはやや低めの評価です。

シリコン塗料

耐用年数は10~15年と長持ちし、塗料のグレードとしても中間クラスです、価格と機能性のバランスが良く、近年の塗装では最も多く使われている塗料です。

フッ素塗料

耐用年数は15~20年とシリコン塗料よりも長持ちします。その分シリコン塗料よりやや高めの価格となっています。

無機塗料

耐用年数15~30年となっていますが、劣化する物質を含んでいないのでほぼ劣化することがない高機能な塗料です。価格はかなり高くなります。

2.機能性による分類

遮熱性塗料

熱を反射して熱が内部に伝わるのを防ぐ塗料です。

断熱性塗料

熱を遮断して熱が内部に伝わるのを防ぐ塗料です。

防水性塗料

熱水分が内部に染み込むのを防ぐ塗料です。

透湿性塗料

水分を中に通さず、内部の湿気だけを外に逃がすことができる塗料です。

不燃性塗料

火災時に燃え広がるのを防ぐために使用する塗料です。

防カビ・防藻塗料

外壁表面にカビや藻の発生を防ぐことができる塗料です。

低汚染塗料

外壁の表面に汚れが付きにくく、付着した汚れは雨など自然の水で流れやすくする塗料です。

光触媒塗料

光と化学反応により外壁表面に付着した汚れを除去することができる塗料です。

窯業系サイディングの塗料の選び方

熱への対応

熱に対応するために遮熱性や耐熱性の高い塗料を選ぶのがおすすめです。
窯業系サイディングボードはセメントを材料として作られているので、熱を吸収し溜め込みやすい性質があります。熱が溜まると家の中の温度も高くなるので夏は冷房効率が悪くなります。また、熱は塗膜や外壁材の劣化を早める原因にもなります。

湿気への対応

湿気に対応するために透湿性の高い塗料を選ぶのがおすすめです。
サイディングボードは水や湿気を吸収しやすく、熱をため込みやすい性質から揮発した水分が外壁材と塗膜の間に溜まりやすくなります。外側からは防水性が必要ですが、内側からは適度に湿気を逃がしたほうが、外壁も塗装も長持ちします。

汚れ

サイディングに限らずですが、せっかく塗装しても見た目が汚い外壁は残念な印象になってしまいます。塗装後のメンテナンスを減らすためにも汚れが付きにくい機能を持った低汚染、防カビ・防藻の機能をもった塗料がおすすめです。

色と柄の選び方

窯業系サイディングはデザインが豊富です。せっかく模様が付いていても外壁塗装でその模様が消えてしまうのが嫌だという人には多彩色塗料やクリア塗料がおすすめです。

多彩色塗装

塗装した際に単色にならず、不均一な柄をつくることができます。2色仕上げや3色仕上げがあり、塗料と職人の技術によって石やブロックの質感など不均一な柄で塗装することができます。

クリア塗装

元の色や柄をそのまま活かしつつ、塗膜の機能だけを塗装することができる工法です。透明な塗料で塗装することによって外壁の模様を変えることなく塗装を行うことができます。

特に模様にこだわりがないという人にはツートンカラーにするという選択肢もあります。
また単色で良いという人は人気のグレーやベージュ、黒、白などシンプルな色がおすすめです。

06まとめ

窯業系サイディングは安価でデザイン性が高く、おしゃれで使い勝手の良い外壁材です。きれいな分、劣化が分かりにくいとも言えます。
外壁材が出している劣化のサインを見逃さず、適切なタイミングで外壁塗装を行うことが大切です。
サイディングの外壁塗装ではシーリングの打ち替えが必須であり、この作業をしっかり行わないと後からメンテナンスが大変になります。

窯業系サイディングの外壁を使用されている方はこの記事を参考に適切なメンテナンスを行い、また新たな色味や模様を楽しみながら外壁を長持ちさせてください。